「歯が痛い」といえば、う蝕(むし歯)、歯周病や親知らずを想い浮かべると思います。ほとんどの場合は口腔内を診ることで、原因が分かり、診断がつきます。
しかしお口の中に明らかな原因が見当たらないこともあります。「歯が痛いのは歯が原因」と思いがちですが、痛みを感じる部位に痛みの原因があるとは限りません。そんなケースでは歯(口腔)以外の原因を考えることになります。
痛みは①身体疾患による痛み②神経障害による痛み③精神疾患による痛みに分けられます。
〇 身体疾患による痛みとは、外傷でけがした時の痛みで、いわゆるキズにあたります。これは口腔内でいうと、う蝕(むし歯)や歯周病による腫れ等になります。
〇 神経障害による痛みとは、腕が切断され、なくなっても腕が痛く感じる痛み(幻肢痛)です。三叉神経痛や外科処置による神経損傷によって起こるものです。
〇 精神疾患による痛みとは、身体には異常がないにもかかわらず痛みを訴えるケースです。
身体疾患による疼痛であれば、診断がつけば治療されることになります。このように歯や歯ぐきが原因であるいわゆる「歯が痛い」ではなく、歯科的原因とは全く異なる原因であることがあります。歯科で調べても原因が分からず、痛み止めもほとんど効かず、耳鼻咽喉科や内科で調べても原因が不明の痛みもあります。
頭痛、肩こりに伴う歯の痛みを経験された方もあるでしょう。これは痛みの発生部位(原因部位)と、痛みを感じる部位が異なることで出る症状です。
このように「歯が痛い」といって、口腔外に原因があるケースは多くはありません。決して歯痛は治って当たり前ではなく、様々な原因が考えらるため、患者さんとの十分に話し合い、納得してから治療を受けることで、治療のストレスを軽減し、正しい診断に結びついていきます。